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第3話 必殺ノック

last update Terakhir Diperbarui: 2025-12-18 13:01:17

 私は夫ラファエルに話をつける為、彼のいる部屋目指して歩いていた。

それにしても広い、広すぎる。

かれこれ5分近く屋敷の中を歩いていた。

「全く広すぎる屋敷と言うのも考えものよね……」

着ているドレスは邪魔だし、何より文明が遅れている。

一応自動車もバスも存在しているが、主流は馬車。

明かりはガスランプか石油ランプ。電話も、庶民にはまだまだ手が届かない高嶺の花。

 

「前世の記憶が強いと困るわね。ネットが恋しくてたまらないわ。電子レンジだって無いんだもの……」

途中何人もの使用人達にすれ違ったが、誰一人として挨拶すらしてこない。

つまり、それだけ私はこの屋敷に歓迎されていなかったのだ――

****

 

ラファエルの部屋に到着し、扉をノックしようとしたとき。

「ああ! お、奥様! いけません!」

夫の専用フットマンのリックがバタバタと駆け寄って来た。

「おはよう、リック。何がいけないの?」

「おはようございます、奥様。張り紙をご覧ください」

リックが指さした先には小さなメモが貼り付けられていた。そこには私の出入り禁止、破った場合二度と口を聞いてやらないと記されている。

全くばかばかしい。 

メモ紙をクシャクシャにすると、リックに渡した。

「ゴミよ、捨てておいて」

「お、奥様……何てことを……」

リックは涙目になる。

「大丈夫、貴方は何も見ていない、ここには私しかいなかった。泣かなくていいのよ」

そして背伸びしてリックの頭を撫でてやる。

「こ、子供扱いしないで下さい! だ、大体奥様は私より年下じゃないですか!」

リックは顔を真っ赤にさせた。

「あら、ごめんなさい。つい……」

「ですが、何だか奥様……雰囲気が随分代わりましたね?」

リックがじっと見つめてくる。

「ええ、そうなの。今日から心を入れ替えることにしたのよ。リックのことは黙ってるから安心して」

「はい、よろしくお願いします!」

その場を逃げるように去るリック。

「さて、旦那様とアネットに朝のご挨拶をしますか」

早速扉をノックする。 

――コンコン

まずは右手で軽くノック。……はい、出るわけないわよね。

――ゴンゴン!

次は強めにノック。

それでもやはり無反応。

「す〜」

大きく深呼吸すると……。

ダンッ!

ダンッ!

ダンッ!

拳を握りしめ、身体を海老反りして両手で思い切りドアをノック。その名も『必殺!管理人ノック』。

前世で学生寮の管理人をしていた時に培った技。このノックは、どんなに寝坊助でも起こすことが出来た。

「うるさい! 誰だ!」

流石にたまらないと思ったのだろう。乱暴にドアが開き、着衣が乱れたラファエルが現れる。

「おはようございます、旦那様」

「げ! ゲ・ゲ・ゲ……ゲルダ!」

「……朝のご挨拶に参りました」

ロングスカートの裾をちょっとつまんで朝の挨拶をした――

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